たどん

父の遺品は、難しくて、なじみのないものばかりです。

消耗品は使ってしまおうと、出て来た「香炉」みたいなものを

ためしています。聞香とかいう道具のようです。

練香とかいうものでしょうか、陀羅尼助の大きいような形の香、

それを、網の上に置いて下から炙るらしい。

このことに気づくまで、時間がかかっています。

その「下から炙る」その「火」のもとですが、

父のことだから、絶対にあるはずだと探しました。

なんと、きちんと同じ場所にセットされていました。

眼に入らなかっただけですね。

「たどん」といいます。

父と話したことを覚えています。

この「たどん」をセットして、下から火をつけます。

このたどん。すぐに火がついて、驚きます。

こうして、一粒、焚いて、

朝はうっすらと残った香りに、気持ちよく起きられます。

無くなるまで焚くつもりです。

本当に、ささやかな努力で、

モノを減らしています。