あっちゃん

あつちやんと妻呼ぶ暮らし茄子の花  鈴木親典

 

誤解を恐れずに言えば、私は、

質の高いことと価値があることとは、

必ずしも比例しないと思っています。

掲句が下手だと言っているのではありません。

ただ、特選がバンバン入ってくるような

俳句ではないと思います。

それでも、これが、天へ送った夫の俳句だと知ったなら、

大きく心が揺さぶられるのではないでしょうか。

子供たちも独立し、夫婦だけの生活が戻って来ました。

夫は、あっちゃんと妻を憚らずに呼びます。

照れ臭くも嬉しい熟年夫婦を思います。

茄子の花により、素朴な暮らしが分かり、

幸せとはこのようなものだと教えられます。

作者は、今年の夏、病により他界されました。

遺された妻は、この句を抱きしめるように

慈しんでいるのではないでしょうか。

そこに、この句の価値があります。

どのような優れた俳句も

あっちゃんにとっては、この一句にかないません。

いい句ですね。

この句を残してくれて、

あっちゃんはきっと幸せだと思いますよ。